「第二の大井町」はどこか 都市構造の類似性から浮かんだ京橋・野田阪神・北千住

マンションリサーチ株式会社は、街に関する情報を収集・分析して都市構造の可視化に取り組むGEXT合同会社と共同で、大井町駅周辺と都市構造が似ているエリアを抽出し、中古マンション市場の動きを比較する調査をまとめました。対象期間は2022年1月〜2026年9月です。大井町駅・北千住駅・京橋駅(大阪市)・野田阪神駅周辺の中古分譲マンション市場データを解析しており、総データ数は13,074件にのぼります。分析では、流通市場の売り出し事例を幅広く集め、オリジナルの統計モデルを適用して各種指標を算出しています。

再開発で姿を変えた大井町と、「似た街」を探す新たな物差し
大井町駅周辺では近年、大規模な再開発が進み、街の利便性や魅力が大きく高まってきました。JR京浜東北線、東急大井町線、りんかい線の3路線を使える交通利便性に加え、商業施設や生活利便施設の充実、都心へのアクセスの良さなどを背景に、住宅地としての評価も上がっています。調査では、再開発で街の将来像がはっきりしたことにより、将来の発展への期待が不動産価格にも反映されてきたとみています。そのうえで、都市機能が充実し住宅地としてのポテンシャルを持ちながら、まだ十分に注目されていない街があるのかという問題意識から、「第二の大井町」の抽出に取り組みました。
街を比べる際は、人口規模や世帯構成、駅の乗降客数、商業施設の集積状況などがよく使われます。ただ、人口や乗降客数が同じくらいの駅でも、飲食店が多く集まる街と、日常の買い物施設が充実した街とでは、都市機能や利用者の行動特性が大きく異なります。そこで今回は、GEXT合同会社の都市機能や店舗・施設などに関するデータ分析と、マンションリサーチ株式会社が持つ不動産市場データを組み合わせました。街について発信される情報量や、飲食店舗、購買店舗、移動手段、暮らし・遊びに関連する施設などの分布を分析し、施設の多い少ないではなく、どのような都市機能がどの程度のバランスで集まっているかに着目しています。
具体的には、各都市機能の指標を10段階で評価し、データの分布をもとに偏差値を算出して街ごとの特徴を相対的に比べました。規模の大きな街が単純に高く評価されるのを避け、大井町駅周辺を基準に指標の構成を比較することで、都市機能のバランスが近いエリアを抽出しています。なお、この評価は街の優劣を直接示すものではなく、類似性が高くても不動産価格が同程度であることや、将来の価格上昇を保証するものではないとしています。一方で、都市構造が似ているのに市場評価が異なる場合には、その違いを生む要因を考察できるとしています。

類似スコアが特に高かった3つの駅
分析の結果、大井町駅周辺との都市構造の類似スコアが特に高かったのは、大阪市の京橋駅と野田阪神駅、東京都23区の北千住駅の3駅でした。それぞれの特徴は次のとおりです。
- 京橋駅(大阪市):JR・京阪・大阪メトロが接続する交通結節点で、商業施設や飲食店が集積するエリア
- 野田阪神駅(大阪市):梅田方面へのアクセスが良好で、日常的な商業機能と住宅機能が共存するエリア
- 北千住駅(東京都23区):複数路線が集まる交通拠点で、商業・飲食・住宅機能が複合的に形成されたエリア
3駅はいずれも都心部へのアクセスに優れ、駅周辺に多様な都市機能が集まっている点が共通しています。ただし、街の知名度や再開発の進み具合、住宅地としての市場評価はそれぞれ異なり、調査では、都市構造は似ていても不動産マーケットでは異なる成長過程をたどっている可能性があるとしています。

成約坪単価と在庫に表れた大井町との違い
4駅周辺の中古マンションの成約坪単価を比べると、大井町駅周辺では再開発への期待や住宅需要の高まりを背景に上昇してきたものの、2025年末をピークに、2026年上期末には下落する動きが確認されました。調査ではこれを、街の魅力が下がったことを直接意味するものではなく、これまでの値上がりで市場評価が先行し、価格面で一定の調整が生じている可能性があると説明しています。これに対して京橋駅、野田阪神駅、北千住駅の周辺では、成約坪単価が上昇、あるいは高い水準で横ばいに推移しており、都市構造が似た街どうしでも、市場評価の進み方に時間差がある可能性を示しているとしています。
在庫動向にも違いが見られました。大井町駅周辺では直近の中古マンション在庫が増加傾向にあり、以前と比べて需給バランスに変化が生じている可能性があります。一方、京橋駅周辺と北千住駅周辺では在庫がおおむね安定して推移し、野田阪神駅周辺でも直近では在庫動向から需給改善がうかがえるといいます。在庫数は新規売出件数にも左右されるため、増減だけで流動性を断定することはできないとしつつ、成約価格の推移と併せて見ると、大井町駅周辺では値上がりに一服感が表れる一方、3駅では比較的安定した市場環境が保たれている可能性が見えてくるとしています。

単に次の再開発エリアを予測するのではなく、都市の実力と市場評価の違いを可視化する試み
調査では、都市のポテンシャルと不動産市場での評価は、必ずしも同じタイミングで高まるわけではないと考察しています。大井町駅周辺では大規模再開発をきっかけに注目度が急速に高まり、将来への期待が価格に反映されてきたと考えられる一方、3駅は既存の交通利便性や商業集積、生活環境といった都市本来の機能を背景に住宅需要が形成されている可能性があり、実際の居住需要や地域の需給環境に沿った形で市場評価が進んでいるとも考えられるとしています。
あわせて、3駅が必ず大井町駅周辺と同じ価格上昇を経験するという結論ではなく、都市構造が似ているのに価格や在庫の動きが異なるという事実そのものに分析上の価値があるとしています。「第二の大井町」を探す試みは、単に次の再開発エリアを予測するものではなく、都市の実力と不動産市場における評価の違いを可視化するための新たなアプローチだと位置づけています。今後は都市構造の類似性に加え、成約価格、販売日数、値下げ率、在庫動向などを組み合わせて、都市機能に対する市場の評価を多角的に検証することが重要になると考えられるとし、3駅についても価格動向と流動性を継続的に観測していく方針です。執筆は、GEXT合同会社CEO & FOUNDERの寺田和弘氏と、マンションリサーチ株式会社データ事業開発室 不動産データ分析責任者で福嶋総研代表研究員の福嶋真司氏が担当しています。


