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職人と生み出した2つの住まいが受賞。平成建設「混跡の住処」と「バンレーラ鷹番」が2026年度グッドデザイン賞

職人と生み出した2つの住まいが受賞。平成建設「混跡の住処」と「バンレーラ鷹番」が2026年度グッドデザイン賞

静岡県沼津市に本社を置く株式会社平成建設が、2026年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を2作品で受賞しました。受賞したのは、新築住宅「混跡(こんせき)の住処」と賃貸集合住宅「バンレーラ鷹番」です。同社のグッドデザイン賞受賞は、これで通算20件目になります。2つの建物はいずれも、200名超の職人を抱える同社の内製化の仕組みを生かし、職人と協働してつくられました。

photo:傍島 利浩
photo:傍島 利浩

「混跡の住処」:時を重ねるほど味わいが増す住まい

「混跡の住処」は、コンクリートをはじめとするさまざまな素材の力強さと、職人の手跡を重ね合わせた住宅です。完成したときが一番良い状態となる、工業製品中心の建築に感じた違和感が出発点でした。そこで、年月とともに「正しく古びる」経年変化を美徳とする空間を構築しました。3種類の型枠を使ったコンクリートの表現と職人との対話を通して、歳月を重ねるほど生命力を増していく根源的な居場所と、住まうことの本質的な豊かさを追い求めています。

図面だけでは決めない、職人との家づくり

この住宅は、加工場での試作と職人との対話を何度も重ねることで、図面を超えた密度をもつ空間に仕上がっています。設計者がすべてを管理するのではなく、つくり手の技や素材の揺らぎに任せる部分を残しました。現場でのとっさの判断や偶然から生まれたものも、設計の一部として取り込んでいます。

具体的な成果として、コンクリートの壁面では、3種類のベニヤをランダムに並べて型枠とし、色ムラや写し取られた木肌を、素材そのものの表情として意図的に引き出しました。桟木(さんぎ・型枠を固定する細い材)がつくる細かな凹凸は柔らかな陰影を生み、そのときどきの光を静かに映します。空気に触れて色が変わる真鍮や、手触りを増す木、土といった素材も「正しく古びる」ことで、住まうことの本質的な豊かさを表しています。

  • 3種のベニヤ型枠による凹凸が陰影を生み、無機質なコンクリートに、光の移ろいをとらえる肌合いを与えた
  • 自社の職人と試作を重ね、その場で生まれた手跡を設計に取り込み、図面を超えた空間の密度を生み出した
  • 真鍮や木、土など「正しく古びる」素材が、家族の日常を素材の表情として積み重ねていく

審査委員は、コンクリート造は最も一般的な建築構法でありながら、最後には撤去される型枠の工夫次第でまだ新しい可能性があると述べています。そのうえで、性質の異なる3種類の型枠を開発し、立体的で彫りの深い新しい打ち放しの表情を実現した点を評価しました。専門の職人の知見を綿密なコミュニケーションで引き出したことについても、技術者の可能性を見直す正しい試みだとしています。

職人と生み出した2つの住まいが受賞。平成建設「混跡の住処」と「バンレーラ鷹番」が2026年度グッドデザイン賞

「バンレーラ鷹番」:つくり手の「楽しい」が形になった賃貸住宅

「バンレーラ鷹番」は、パターン化や設計士のデザインが優先されがちな今の時代に、「ものづくりの魅力」を追い求めた唯一無二の建物です。職人とともにデザインを考えたつくり手たちの「楽しい」が形になり、独創的で柔らかな印象を与えています。建築工程の内製化を果たした建築会社が手がけ、人の思いをつなぐ「バンレーラ鷹番」は、後世に続く価値ある宝になるとしています。

街になじむ外観と、旧邸宅の記憶を受け継ぐエントランス

外観では、住戸の区切りや不要な線をなくし、建物全体を一つのボリュームにまとめました。同じ意匠を繰り返すよくある形ではなく、一つの塊としての純度を高めています。日の当たり方で表情が変わる有機的な造形は街並みに優美に溶け込み、地域の特性に合わせながら建築としての個性も生んでいます。アプローチからエントランス内部までの道のりは、旅館を思わせる演出でありながら華美ではなく、「奥ゆかしさ」を持たせました。入居者を品格のある静かな暮らしへと導く設えです。

構想の段階から職人が加わったことで、計画前に旧邸宅の古材や庭木を確保できました。旧邸宅の玄関の床板を生かして取り外し、つくり直したディスプレイや、庭の桜を使ったモニュメントがエントランスを飾っています。関わった全員が一丸となって取り組んだこの建物の特徴は、設計図を無理に完璧なものにせず「提案」として用いることで、一人ひとりの意見を随所に反映させた点です。ものづくりの楽しさを取り入れたデザインは、入居者や近隣の人々からも共感を得ました。

  • オーナー、設計士、職人の創造力と願いを一つにまとめ、賃貸事業でありながら「ものづくりの魅力」を表した建築
  • 日照によって変わる外観の表情が、まるで生きているかのようなデザインに
  • 制作工程の「自由さ」と手仕事の味わいが生む独自性と、後世まで続く希少価値

審査委員は、設計図を確定した指示書ではなく提案として扱い、工事の途中で職人の判断を受け入れる進め方に注目しました。賃貸事業でこの方法を選ぶと、通常は責任の所在があいまいになり、工事費や工期の管理が揺らぐと指摘しています。それでも破綻しなかったのは、建築工程を内製化した会社が設計と施工の両方を担っていたからだと見ています。そして、垂直統合という事業形態が設計の自由度を生み得ることを実作で示した点に価値があるとしました。手間のかかる有機的な外観についても、その負担を社内で吸収できる体制があったからこそ選べた形だと述べています。構想段階から職人が加わり、旧邸宅の古材や庭木を解体前に確保できたことも、段取りを先に整えたからこその成果だと評価しました。

職人と生み出した2つの住まいが受賞。平成建設「混跡の住処」と「バンレーラ鷹番」が2026年度グッドデザイン賞

本社で「歴代グッドデザイン賞受賞展」を開催

今回の受賞を記念して、平成建設の本社(静岡県沼津市)では、10月15日(木)から「歴代グッドデザイン賞受賞展」を特別に開催します。意匠を凝らした建築物や、同社の取り組みを紹介する内容です。詳細は、同社の広報デザイン課で受け付けています。1989年2月に設立された同社は、創業以来「建築工程の内製化」と「職人育成」に取り組み、現在は200人を超える職人集団を築いています。職人を育てて次の世代に技術をつなぐことを使命と考えており、今後も建築というものづくりの中でデザインの活用を積極的に進めていくとしています。

出典:株式会社 平成建設