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品川インターシティの屋上で「水素をつくって、ためる」 既存オフィスビルが挑む二つの脱炭素策

品川インターシティの屋上で「水素をつくって、ためる」 既存オフィスビルが挑む二つの脱炭素策

完成済みの大型ビルで、エネルギーの使い方を見直す

脱炭素の取り組みというと、新しく建てる建物の話と思われがちです。一方で、街にはすでに多くのビルが建ち、日々電力を使い続けています。こうした既存の建物で、エネルギーの使い方をどう変えていくかも大きな課題です。

JR品川駅から徒歩6分の場所にある大規模複合施設「品川インターシティ」で、日鉄興和不動産、住友生命保険、大林組の3社が新たな環境施策に取り組みます。ひとつは屋上の太陽光発電を使ってグリーン水素をつくり、施設内で使う仕組みの導入です。もうひとつは、離れた場所にある太陽光発電所から再生可能エネルギー由来の電力を買い取る契約です。都市の既存ビルが自らの敷地と外部の電源をどう組み合わせるのか。土地や建物の活かし方に関心のある方にも参考になる事例です。

屋上の太陽光で水素をつくり、必要なときに電気に戻す

一つ目の取り組みでは、品川インターシティの屋上に太陽光発電設備を設けます。そこで生まれた電力で水を分解するなどしてグリーン水素を製造し、水素吸蔵合金に蓄えます。蓄えた水素は、必要な時間帯に燃料電池で電気に戻し、施設内で利用します。電力は当面、共用部の一部照明に供給される予定です。

太陽光発電は日中しか発電できず、電気が必要な時間帯とずれることがあります。電気をいったん水素の形でためておけば、このずれを埋めて、再生可能エネルギーをより無駄なく使えるようになります。屋上という限られたスペースを、エネルギーを「つくる」「ためる」場所として活かす発想です。

この事業は、東京都が脱炭素社会の実現と水素エネルギーの普及拡大に向けて設けた「グリーン水素製造・利用の実機実装等支援事業」の助成金を活用した第1号案件です。目的は二酸化炭素排出量の抑制とカーボンニュートラルへの貢献とされています。

設備をまとめて制御し、都市型のモデルづくりへ

システムは、太陽光発電設備、蓄電池、水素製造設備、水素貯蔵設備、燃料電池発電設備で構成され、EMS(エネルギーマネジメントシステム)がこれらをまとめて制御します。都市部の既存業務施設で、水素の製造から貯蔵、利用までを一か所で行うことで、運用のノウハウやデータを積み重ねていく考えです。将来的には、災害時などにも役立つ自立分散型のエネルギーシステムとして活用できるかどうかも検証していきます。

離れた太陽光発電所の電力を、長期契約で直接調達

二つ目は、オフサイトのフィジカルPPA(電力購入契約)の導入です。発電事業者が設置・保有する太陽光発電設備で発電した電力を、電力系統を通じて品川インターシティへ届けます。環境価値だけを証書で買うのではなく、電力そのものと環境価値をあわせて調達する点が特徴です。すでに電力の供給は始まっています。

  • 導入手法:フィジカルPPA(実電力供給)
  • 電源種別:太陽光発電
  • 契約形態:長期電力購入契約
  • 見込まれる効果:年間約300万kWhの再エネ電力利用、年間約1,200tのCO₂排出量削減

この契約により、ビルで使う電力の一部が、新たな再エネ電源の増加につながる「追加性」のある電力に置き換わります。オフィスや商業施設を長く運営していくうえで、脱炭素への対応は避けて通れません。3社は環境負荷の低減と都市機能の高度化の両立を掲げており、敷地内での水素活用と敷地外の電源からの調達を組み合わせることで、持続可能な都市づくりを進めていくとしています。

品川インターシティは東京都港区港南2丁目15番1〜4号に位置し、京浜急行品川駅からも徒歩8分です。敷地面積は34,387.9㎡、延床面積は337,126.4㎡で、事務所、店舗、多目的ホール、駐車場を備えています。これだけ大きな既存施設での実践から、今後どのようなデータや知見が得られるのか注目されます。

出典:日鉄興和不動産株式会社